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大阪家庭裁判所 昭和44年(少ハ)7号 決定 1969年5月13日

本人 D・T(昭二三・一〇・一五生)

主文

右の者を昭和四四年五月六日から同年九月二一日まで久里浜少年院に継続して収容することができる。

理由

久里浜少年院長提出の収容継続決定申請書及び少年調査記録によると、右の者は昭和四三年五月六日当裁判所で特別少年院送致の保護処分を受け、同月八日河内少年院に入院、その後久里浜少年院内の久里浜理容学校に入校のため同年九月二四日同院に移送されたもので、同人は同年一〇月一五日満二〇歳に達し、同四四年五月五日収容期間満了となるところ、後記の理由により、犯罪的傾向が尚十分に矯正されていないため退院させるに不適当であるから、申請期間内の収容継続を認められたいというにあり、申請理由として、まず(一)右の者の在院成績は良好と認め難いうえ、処遇段階も一級下であり、反社会的傾向も十分矯正されたとは認められない。ひき続き収容して矯正教育を施す必要があり、(二)本人は久里浜理容学校入校を希望して河内少年院から移送されたもので、目下理容学校生徒としてその課程を履修中であり、本年九月二二日卒業の見込みである。本人も同校卒業の資格を得た上で退院の希望であり、本人の希望に副うことはその保護更生上も望ましいと考えられる、という。

よつて、右申請理由の当否について考える。本人、保護者実父D・Mの各陳述、法務教官岡田俊二、調査官大倉啓助の各意見を綜合してみるに、本人の在院成績良好とはいい難いにしても、反則事故があるわけでもなく、本人退院後の受け入れ環境にも特別の問題もなく受入可能と認められ、満期退院を拒否すべき理由は認められない。しかしながら、久里浜理容学校入校は本人が希望して入校したもので、同校卒業は本人の熱望でもあり、保護者としても異存のないところと認められ、本人のこれまでの生活歴に照らし、一定の職業教育を身につけることが本人の保護更生の上に極めて効果的であると考えられる。そうであると、本人を理容学校卒業の日まで、その収容を継続することが、本人の保護更生上反つて相当であると認めるので、本申請を理由ありと認め、少年院法一一条三項四項により主文のとおり決定する。

(裁判官 西田篤行)

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